初めてのお買い物??
はじめに・・・
これは設定としてTV版天地無用!の設定だと思って見てくださいね。
某月某日 晴れ
砂沙美たちの地球暮らしが始まって、はや一ヶ月。
おじさまやおじいさま、そして天地兄ちゃんにいろいろ教えてもらって、
ようやく地球という星を理解して地球の習慣にも慣れてきました!
今日は砂沙美が地球に来てから毎日のように行っている買い物に阿重霞お姉さまがちょっと興味を
持ったみたいで砂沙美と一緒に行くって言い出したんだ。
そして阿重霞お姉さまと一緒に行くことになったんだけど…
お姉さまったらまた事件を起こしちゃったんだ。
でも、今回の事件はちょっと複雑な感じ…
今日、こんな事があったの。
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「じゃあ、行ってくるね、天地兄ちゃん!」
「さぁ、行きますわよ!!」
「は〜い!」
「行ってらっしゃい!!」
砂沙美は阿重霞にせかされながら柾木家を出発した。
阿重霞は興味津々の様子である。
「待ってよ〜お姉さま!!」
砂沙美は小走りで阿重霞に追いついた。
「でも、変だなぁ〜お姉さまが一緒に買い物に行くって言うなんて…。明日は雨だね。」
砂沙美が軽く阿重霞に攻撃をする。
「な、なにを言ってるのよ、砂沙美!! そんな事ないです。私はただ
いつも砂沙美が行っている『スーパー』というものを見てみたいだけですわ。」
樹雷王家第一皇女だった阿重霞にとって買い物なんて今まで行った事もなかった。
もちろんそれは砂沙美にとっても地球に来てはじめての体験だった。
阿重霞は砂沙美が毎日楽しそうに行っている買い物というものを体験してみたかったのである。
「でも、歩きなんてめんどくさいですはねえ。阿座化や火美猛に乗って行けばすぐですのに。」
今までにそんなに『歩く』ことをしなくてもよかった阿重霞は早くも疲れ気味の様子である。
「駄目だよ〜地球には阿座化や火美猛みたいなガーディアンはいないって
天地兄ちゃんが言っていたでしょ? だから駄目なの!」
「分かってますわよ〜。でもちょっと疲れました。休憩しましょう、砂沙美。」
阿重霞はそう言って近くにあった大きな石の上に座った。
「えぇ〜まだ10分も歩いてないんだよ。ほら、お姉さま。」
「いやです。休憩します!!」
まるで年齢が反対の親子のようである。
「もう〜だから魎呼お姉ちゃんに『としま』なんて言われるんだよ!」
「それは関係ありませんわ! あの下等犯罪者の言う事なんて聞いちゃ駄目ですよ、砂沙美。」
「さぁ〜お姉さま!」
「いやです。」
砂沙美の顔がぷくっとふくれた。
「…………………なんかこどもみたいだよ。」
「妹に言われたくないです!」
ふくれた砂沙美とそっぽを向く阿重霞。
しかし、二人の同じ色をした瞳があい、二人の顔が緩む。
「うふふ…。」
「お姉さま、もう少しだから…。」
「分かりましたよ!」
砂沙美の説得で阿重霞はやっと重い腰を上げた。
砂沙美と阿重霞は影を並べ、それぞれの手をつなぎながらスーパーに向けて歩き出した。
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「はぁ〜…ここがスーパーですか…。」
「そうだよ。」
砂沙美と阿重霞は入り口を入ってすぐの所に立っていた。
色とりどりの野菜や果物、そして昼間なのに明々と光る照明、飛び交う店員の声、
そして大勢の客が店内を埋め尽くしていた。
「砂沙美もまだ何回かしか来た事ないけど…すごいよね…なんか。」
「へぇ〜なかなかおもしろそうな所ですわねえ。」
阿重霞ははじめてみる風景に少し圧倒されていたが、それがだんだんと好奇心に変わっているのであった。
「あ〜あ、勝手にうろうろしちゃ駄目だよ!」
「大丈夫よ。」
そう言いながら阿重霞は回りのものをどんどん物色していった。
「もう…仕方ないなぁ〜。じゃあ、この辺りにいてね。砂沙美は上の階でちょっと買うものがあるから!」
昨日の魎呼と阿重霞の喧嘩で割られたお茶碗とお皿を買うためである。
そのために今日はわざわざ雑貨用品を売っている少し遠いスーパーまで来たのである。
「ちょっと、お姉さま聞いてる?」
「ええ。」
返事はするものの阿重霞は砂沙美の言うことなど聞いていないように見える。
砂沙美はその事をなんとなく分かってはいたが、今は何を言っても無駄だと判断して阿重霞に
もう一声かけて二階へとあがって行った。
「ああ…お姉さまたちが喧嘩しなかったら今日は豪華にお肉にしようと思っていたのに…
やっぱりカレーかな?」などとため口をこぼしながら…。
えっ? 砂沙美がなぜ、阿重霞を2階に連れて行かなかったのかって?
それは、お皿や、グラスなどの割れ物などがあるから。
砂沙美は以前、阿重霞に皿洗いのお手伝いをしてもらっている時のことを思い出し、
これが砂沙美なりに考えた結果だったのだ。
実の妹は姉の不器用さをよく知っていたのである。
一方その阿重霞はというと…
「なるほど…これが地球の食べ物ですか…。樹雷にも似たようなものがありますわ。」
入り口から離れ、野菜・果物売り場からどんどん中に入って行く。
やはり、砂沙美の言ったことなど聞いていなかったようである。
二階に連れて行かなかったは正しい選択であったかもしれないが、一人にしておいたのは
失敗だった。
「これは…勝手に頂いてよろしいのでしょうかねえ。まあ、いいでしょ、頂いてみましょう。」
「うぇぇ〜まずぅ! なんてまずいものを。こんな物いりませんわ!」
店内の生鮮食品売り場を物色し、更に試食コーナーで試食品を味見して、まずければ皿に返す。
まさにやりたい放題である。
「お、お客様! トレイにお戻しになるのはおやめください。」
阿重霞の行為を見た店員が阿重霞に近寄り、そう注意する。
しかし阿重霞と来たら…。
「な、なんですって!? この樹雷王家第一皇女であるこのわたくしに
このようなまずいものを食べさたうえに戻すなとおっしゃるのですか。なんと無礼な!」
などをいいながら逆に店員に文句をいい、そしてまた次のコーナーへと足を進めて行くのであった。
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「しかし、砂沙美は遅いですわねえ。どこに行ったんでしょ?」
やっと砂沙美のことを思い出した阿重霞はあたりを見渡し砂沙美を探す。
だがそこに砂沙美はいるわけがない。
やはり阿重霞は砂沙美の言ったことを正確には聞いていなかったようである。
「砂沙美!」
阿重霞は声を発して砂沙美を探し始めた。
同じ頃…。
「やっぱり…。」
砂沙美は上の階での買い物を終え、下の階に降りてきて
あたりを探すが阿重霞がいない。
「ここで待っててって言ったのに…。お姉さまどこに行ったんだろう。」
そう思いながらも砂沙美は入り口周辺を探していた…。
「ささみぃ〜!」
阿重霞も店内を大きく回りながら砂沙美を探していた。
しかし、突然阿重霞の足がお肉のコーナーの前でとまった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
店内は一瞬静まりかえり、そして何があったのかと騒然としてきた。
その声を発したのは阿重霞だった。
「ど、どうしました、お客さん」
近くにいた店員が阿重霞に近づく。
「あなた…な、なんてことを!」
「はぁ?」
「わ、私の…大切な……を…こんな…。」
阿重霞は思いっきりこぶしを振り上げて言った。
「お客さん、ちょ、ちょっと落ち着いて。いったい何が?」
店員は何がなんだかわからない。
しかし、阿重霞はそのまま店員を投げ飛ばし、魎呼と張り合うがごとく結界をはる。
「死んでおしまい! 砂沙美のかたきぃぃーーーーーー!!」
「お姉さま!!」
店全体に響き渡った悲鳴はもちろん砂沙美の耳にも聞こえていた。
すぐに阿重霞の声だと悟った砂沙美は大慌てで声の聞こえた方へと向かって
走り、そこで阿重霞を見つけたのである。
「お姉さま!」
「砂沙美ぃぃぃぃーーー!!」
「はぁはぁ…ど、どうしたのおねぇ」
「ああ…よかった! 無事だったのねぇ〜砂沙美!」
砂沙美が話しかけているにもかかわらず、それに答えず阿重霞は笑顔で砂沙美に話しかける。
「へぇ? な、なに? どうしたのお姉さま!」
砂沙美は何がなんだか分からなかった。
阿重霞の言っている意味も分からず、さっきと同じ質問を再び問う。
しかし、阿重霞はまったく砂沙美の質問を聞かずに
いきなり砂沙美を抱きしめた。
そして、そのまま動かなかった
砂沙美はますます意味が分からなくなり、ただ阿重霞に抱きしめられるがままである。
しかし、よく見ると阿重霞は何かを持っている。
砂沙美はそれに気づいた。そして、砂沙美はその阿重霞が手に持っているものを
そっと見てみた。
阿重霞の持っていたのはお肉の入ったトレイで、そのトレイのラベルには
こう文字が書かれていた。
『ささみ』
「………。」
「砂沙美がそんな姿にされてしまったのかと思いましたわ〜。でも無事でよかった。」
阿重霞は砂沙美を抱きしめたまま、口を開いてこういった。
「………。」
砂沙美は言葉を失った…。
しかし、次の瞬間砂沙美の顔は真っ赤になり、そっと阿重霞に耳元で話しかける。
「お姉さま、この地球(ほし)には『ささみ』っていう鶏のお肉があるんだよ!」
「えっ?」
今度は阿重霞が言葉を失い、そして砂沙美と同じように真っ赤になった。
「えっ? そんな事言ったって…知らなかったんですもん。」
阿重霞はやっと砂沙美をはなした。
「……………。」
「……………。」
二人の周りは阿重霞の悲鳴が呼んだ買い物客でいっぱいである。
しばらく二人は沈黙した。
あたりが騒ぎ始めたその時、阿重霞はいきなり口を開いた。
「逃げますわよ!!」
「えっ?」
砂沙美が返事したのもつかの間、
阿重霞は人だかりを弾き飛ばしながら全速力で駆け抜けた。
砂沙美も阿重霞が開けた道をとおって逃げて行く。
二人は入った所と同じ場所からそのまま足早と走り去った。
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「はぁはぁ…もう…お姉さまったら…はぁ…はぁ。」
「だ、だって知らなかったんですもの…仕方ないでしょ。」
スーパーから数百メートル離れたところで二人の足はとまった。
「でも、『ささみ』なんてお肉があったなんて……砂沙美は知っていたの?」
砂沙美は首を横に振った。
「砂沙美もこの前はじめて知ったの…聞いたときはちょっとおどろいたなぁ。
お姉さまほどじゃないけど。」
そして砂沙美はこう続けた。
「砂沙美と同じ『ささみ』かぁ…おいしいのかな?」
「ねえ、砂沙美。買ってみましょうか? 『ささみ』ってお肉を」
「うん!」
二人は再び柾木家の方へ向けて歩き出した。
しばらく歩くと柾木家から一番近い商店街がある。
砂沙美と阿重霞はそこで『ささみ』を買う事を決め、いろんな日常的な会話をしながら
ゆっくりと商店街に向けて歩いていった。
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ついに二人は商店街のお肉屋さんの前まできた。
「なんか…急に恥ずかしくなってきたなぁ…砂沙美が『ささみください』って…。」
確かにそれは、何か違和感を覚え、また恥ずかしいものがあるだろう。
まして初めての経験という事もあって、なおさらである。
「じゃあ、お姉さまが言ってあげるわ。」
「えっ?? うん…。」
見かねた阿重霞が名乗り出た。
阿重霞は砂沙美の肩に手をやったあと、お肉屋さんの中に入っていった。
「ピンポン ピンポン…」
入り口のセンサーが反応し、中から30代半ばぐらいの、感じのよさそうな主人が出てきた。
「いらっしゃい!」
威勢が良くて若く、『いかにも』という感じの主人だ。
「ちょっとご主人、この『ささみ』ってお肉をいただけるかしら。」
「へい、何グラムにしましょう?」
「えっ? ……砂沙美、何グラムにするの?」
「えっ? ささみって? お客さん!」
砂沙美は少し早足で阿重霞に近寄り、阿重霞の耳元でこうつぶやいた。
「……お姉さま、名前呼ばないでよ!」
砂沙美は顔を真っ赤にしながら、阿重霞に言った。
「あっ、そうでしたわね…ごめんなさい。」
「お客さん? ささみって…。」
「おっほほ!! なんでもございませんわ。」
訳が分からないお肉屋の主人を阿重霞が笑ってごまかした。
「で、何グラムにするの。」
しばらくして再び阿重霞が砂沙美に問う。
砂沙美は恥ずかしい気持ちを隠し、いつもどおりの顔を作って、
「お兄さん、この肉ってどんな料理に使ったらいいの?」と肉屋の主人に尋ねた。
30代半ば近くの主人に『お兄さん』と気をつかっていう当たりは砂沙美らしい所である。
「そうだなぁ…お吸い物とかに入れるのが一般的だけどね?」
「ふ〜〜ん…。」
砂沙美は頭の中で扱った事もない食材でどんなものが出来るかを想像する。
そう、まるで『料理の○人』にでてくる料理人のように…。
「で、どうするの? 『ささみ』にするのかな?」
「えっ、あっ、うん! じゃあ…300グラムください!」
「はいよ!」
早速主人は『ささみ』を取り出し、はかりにのせて300グラムを量り始めた。
一切れ一切れのせていき、4切れをのせ終えた。
「じゃあ、ちょっと多いけど…いいかな?」
量りのメモリは320グラムと538円を指していた。
「あっ、はい!」砂沙美はそう答えた。
「お嬢ちゃん、かわいいから端数をとって500円でいいよ!」
おまけしてもらった砂沙美たちは主人に代金を払い、一礼をしたあと
再び、家に向かって歩き始めた。
「かわいいだって…砂沙美うれしいなぁ。」
砂沙美が阿重霞に少し得意がって言う。
「あら? あれは御主人が私に対して言われたんですわよ!」
阿重霞も砂沙美にまけじと言う。
「え〜〜違うよ、お姉さまにかわいいなんて…。」
「し、失礼な!! わたくしだってまだまだ二十歳(はたち)なんですから、かわいいって言われたって
不思議じゃないですわ!!」
「うふふふ…。」
「な、なんですかその笑いは!!」
「あっ、ごめんなさい。」
砂沙美と阿重霞のたわいない会話が続く。
こうやって二人の姿を見ていると実によく似た姉妹だという事がよくわかるような気がする
のは私だけではないだろう…。
「さ〜て、今夜のおかずは『ささみ』ね。」
「………。なんか誤解されそうな言い方だね。」
「ふふ、そうね……ってどこからそんなこと覚えたの!!!!」
「えっ?」
「これもあの野蛮人のせいね…。まったく…砂沙美が変なこと覚えたらどうするの!」
阿重霞は勝手に魎呼のせいだと決め付け、いつものように魎呼に対して、
文句をぶつぶつと言い始めた。
最もそのとおりなのだが…。
「変なことって?」
「何でもないです!」
「変なの…。」
「それはさて置き……。」
「『ささみ』ってどんな味がするのか楽しみですわ!」
阿重霞は急に話を戻した。
砂沙美には健全に育ってほしいと思う姉から妹への愛なのであろう…。
「砂沙美も!」
砂沙美もすぐに話を戻した。
あまり深く問い詰めない所も砂沙美らしい所である。
「よ〜し、お料理がんばらなくちゃ!!」
<6>
「は〜〜い! 食事の用意できたよ!」
外が暗くなりはじめた頃、柾木家の夕食である。
にぎやかな柾木家の住人+居候の計8人と一匹が居間に勢揃いする。
柾木家では食事をとる時はみんな一緒という事が原則になっているのである。
「それではみなさん…」
「いっただきま〜す!」
阿重霞が音頭をとり、一斉に食事が始まった。
全員が集う居間のテーブルの上にはしっかりとふたの閉まったお椀が置かれていた。
そう、『ささみ』入りのお吸い物である。
天地がトップを切ってそのふたを開けた。
中にはかまぼこや春菊と一緒に大きく切られた『ささみ』が入っている。
かまぼこや春菊なんて一言も教えられていないのだが、砂沙美が一人で考え、彩りで
入れたのである。まさに鉄人!
「あっ! このお肉は……。」
天地は中に入っているお肉が『ささみ』だという事に気づき、砂沙美の方を見てにゃっと笑った。
砂沙美も同じように天地に向かって微笑む。
「てんちぃ〜、このお肉がどうしたの?」
天地の声にすばやく反応した魎呼が天地にひっつく。
「おやめなさい! この脳無し妖怪!」
阿重霞がいつもどおり口をはさむ。
「誰が脳無しだって…この生かず後家! それにお前のほうが脳無しなんだよ!」
いつもならここから喧嘩へと発展していくのであるが今日の阿重霞は少し冷静であった。
「生かず後家はまあ、おいといて…あなたのほうが脳無しでしょ? じゃあ、このお肉の名前、分かります?」
阿重霞は魎呼にこう問題を出した。
少しにやっと笑いながら…。
「…お前は知っているのかよ!」
「当然! あなたとはここが違うのよ、ここが!」
阿重霞はそういいながら手で自分の頭を指した。
「くそ〜〜〜。」
阿重霞の台本どおりにはまっていく魎呼である。
実は事前にこのような打ち合わせがなされていたのである。
「知らねえよ!」
ついに魎呼はギブアップをして、この中で一番素直に答えてくれそうな砂沙美の方に目をやった。
砂沙美は少し頬を赤らめながら、微笑んでこう答えた。
「実はね、このお肉『ささみ』って言うの。」
魎呼はそれを聞くなり一転して、真面目な顔になった。
「砂沙美、お前まさか…自分の…。」
「はっはっはっはっ…。」「キャハハハ……。」「オッホホホ!!」「ウフフフフ…」
魎呼以外のみんなが一斉に笑い出した。
阿重霞が、天地が、ミホキヨがそして砂沙美が…。
魎呼はなぜみんなが笑っているかなんて知るはずがない。
一人状況を把握できないまま辺りをキョロキョロと見ている。
「やっぱり脳無しですわ!! キャハハハハ…。」
「ハハハッ…魎呼、『ささみ』って言うのは、鶏肉のむねのあたりの肉の事なんだ。」
天地が笑いながら魎呼に答えを教える。
「うふふ…魎呼さんったら〜!」
魎呼は美星にもそう言われてだんだん腹が立ってきているように見える。
確かに、美星に言われると少し腹が立つかもしれないが…。
「お前らも知っていたのか?」
「ええ、さっき台所で砂沙美ちゃんに聞いたの。」
清音もそう答える。
「『ささみ』かぁ…」
「砂沙美ちゃんと名前が同じですもんね。」
勝仁や信幸はもちろん知っている。
「おっほほ! やっぱり知らなかったのは魎呼さん、あなただけだったようね。」
「うるせえぇ!」
魎呼は見事に阿重霞の策略にはまったのである。
阿重霞は自分のことを棚に上げ、魎呼のことを馬鹿にする作戦としてこの事を砂沙美やミホキヨなどと
この夕食前に話していたのである…。
「でも、献立変わったの砂沙美ちゃん? 今日はカレーにするって言っていたのに。」
砂沙美は買い物に行く前に天地に今晩のメニューを言っていたのである。
天地はテーブルの上に並んでいるおかずを見て砂沙美にそう言った。
砂沙美はこう答える。
「うん。砂沙美もはじめはカレーにしようと思っていたんだけど、今日お姉さまとお買い物に行ってら
お姉さまが(痛っ)」
「どうかしたの砂沙美ちゃん?」
砂沙美の表情の変化を天地が心配した。
砂沙美は隣に座っていた阿重霞に足をつままれたのである。
阿重霞が横から「何でもないですわ! オホホ…!」と間に割り込み、砂沙美を軽くにらみつけた。
「怪しいなぁ…砂沙美ちゃ〜ん、何があったのかお姉ちゃんにちょ〜っと話してくれないかな〜?」
阿重霞の異変に気づいた魎呼は何があったのかを砂沙美に求めた。
「何にもなかったって言ってるでしょ! この脳無し!」
「てめぇ〜さっきから黙って聞いてりゃ〜脳無し脳無しって…!」
「あ〜ら、ほんとの事でしょ?」
「私にはなぁ、生きる知恵ってもんがあるんだよぉ! それがないお前の方が脳無しなんじゃねぇのか?」
「何ですって! なんで私が…。前の前から今の今まで……もう、許しません!!」
「やるかぁ!」
「今日こそケリをつけてやる!」
と言ってやっぱりいつもどおり喧嘩がはじまりました。
砂沙美たちが地球に来てから一ヶ月。
毎日毎日お姉ちゃんたちの喧嘩は続いています。
おかげでこっちは大迷惑! いったい、いつまで続くのかな?
でも、お姉さまはあの時、砂沙美の敵を取ろうとしてくれたんだよね。
まあ、それが大騒動になっちゃったんだけど…。
うれしいような…恥ずかしいような…複雑な気持ちでした。
今日はいろんなことがあったけどすごく楽しかった!
それから『ささみ』って言う砂沙美と同じ名前のお肉もおいしかったです。
(おわり)
作者から一言・・・
日常的な出来事・・・こういうほがらかとしたお話は大好きです。
それに実際にありえそうですねぇ・・・阿重霞さんなら。
砂沙美ちゃんはもちろん大好きですが、『ささみ』も大好きです。
関係ないですが、壁紙の砂沙美ちゃん・・・私のかなりのお気に入りです。かわいいぃぃ〜〜。
是非、感想をお聞かせください!
岩城 朝厚〈sa3mi841@mbox.kyoto-inet.or.jp〉へお願いします
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